A「下限リミットスイッチが壊れていました」
日立製 450kgモートルブロックの「巻下げができない」と言う故障の修理です。スペックは以下の通りです。
----------------------------------------------------------------------
メーカー:日立
型式:1/2EH1
定格荷重:450kg
巻上スピード:3.0m/min(50Hz) 3.1m/min(60Hz)
電源:AC100V 50/60Hz 0.25/0.30kw 6.4/6.0A
----------------------------------------------------------------------
まず症状を確認します。電源を入れ、押しボタンの「上」を押すと正常に巻き上がります。続いて「下」のボタンを押すと下がりません。モーターのうなり音がかすかに聞こえます。このことから、上下両方の動作に関係するモーター、ブレーキには異常がないものと推測できます。(通常モーターやブレーキが壊れていれば上下とも動きません)
そうなると、最初に考えられるのは押しボタンスイッチなどの操作に関する部分の故障です。このモートルブロックは、電磁接触器と呼ばれる電磁スイッチを使用していないため、モーター回転の正逆の切り替えを押しボタンスイッチで行っています。比較的大きな電流が流れますから、接点の溶解などが考えられる訳です。ですので、故障の診断としては、人の手が触れることの多い押しボタンスイッチ、操作ケーブル、本体内の回路の順に行ってみることにします。
電源プラグをコンセントから抜き、押しボタンスイッチのケース蓋を外します。スイッチユニットの下半分が「下」の接点ですので、縦方向の導通をサーキットテスターでチェックします。「下」のボタンを押すと左右2つの回路とも導通がありますので、押しボタンスイッチは正常と言うことになります。
続いて押しボタンスイッチと、本体配線結束部までの断線の可能性を調べます。巻下げに関する配線は押しボタンユニット最下部の2本と、中央の2本(上と共通)ですので、その色の配線の結束を外します。この日立モートルブロックに使われている結束端子は、ねじ込みコネクタなどと呼ばれる、取外し再接続が可能な絶縁コネクタです。(内部にコイルスプリングが入っている構造です)押しボタンユニットの接点と、本体結束部間の導通をサーキットテスターでチェックします。4本の線とも導通に問題はありません。
そうなると、あとは本体内部の配線です。フタの裏側に回路図が貼ってありますので確認します。すると、結束部からモーターまでの間にリミットスイッチがあることが分かります。
「下」の配線は、2個のリミットスイッチ(下限)を通っています。もう疑うところはここぐらいしかありません。サーキットテスターでリミットスイッチ端子間の導通を調べます。このリミットスイッチは通常ON、リミットがレバーで押されるとOFFになるb接点のタイプです。導通を調べた結果、1つのリミットスイッチに導通がありませんでした。外観をよく見ると、ボタンが正常な状態より奥まっており、ケースに焼け焦げた痕が見られました。故障個所はこの下限リミットスイッチで確定です。
部品を購入します。外した部品の記載を確認したところ、オムロンの「超小型基本スイッチ SS-5」と判明しました。モノタロウに在庫があります。税別259円/1個です。下限リミットスイッチは2個ありますので、ついでに交換することにしました。
あとは新しいリミットスイッチをハンダ付けし、元どおり組み戻していくだけです。リミットスイッチの位置調整もほとんどできないほどのあそびでした。最終的に動作確認を行い、無事修理は完了です。
今回は日立のモートルブロックを修理しましたが、ねじ込み式コネクタや、再使用可能な結束バンド(コンデンサ固定用)が使われていたため、修理は容易にできました。そもそもAC100Vの機器なので構造は簡易なのですが、直す立場の者からすればありがたい作りです。
↓ 作業の様子はYouTube動画でご覧ください! ↓